飛翔の弁護士による相続遺言窓口
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前回に続きまして、自筆証書遺言において、遺言書が無効に場合としてよく見受けられるケースをお話します。
④相続させたい財産の内容が不明確である。
例えば、「不動産を妻〇〇に相続させる。」との記載を見ることがありますが、複数の不動産を持っている場合には、どの不動産を相続させるのかが不明確であり、自分の思いの通りに相続させられない場合もあります。
但し、裁判所においても、形式的な文言にとどまらず、作成した当時の事情や遺言者の置かれていた状況、本人の発言・メモ等から、可能な限り遺言者の真意を追求して有効にしようと考えてくれる場合もあります。例えば、高齢の妻と長年一緒に居住していた自宅の場合には、「不動産」はその自宅のことであろうという解釈によって、自宅不動産を妻に相続させる遺言として扱われる場合もあります。
⑤2人以上が共同で書いている。
数としては多くはありませんが、自筆証書遺言の中で2人が連名で自書と押印をしている遺言書もあります。
これには夫婦や兄弟などで仲良く、同じ遺志を伝えたいと思われたのか、また、共通の思いであることを伝えることによって相続人がもめることのないようにしてほしいとの思いも含まれているかもしれません。
しかしながら、2人以上の連名があると、その記載がどちらの意思に基づくものか不明確となりますし、1人での遺言書の撤回を制限することにもなりますので、このような遺言は無効とされています。
⑥訂正の方法が間違っている。
よく見受けられるのは、この訂正の方法が間違っている遺言です。
訂正の場合は、訂正する文字の上に二重線を引き、その近くに訂正後の文字を記入します。そして、訂正した箇所の付近に遺言書の最後に押印する印鑑と同じ印鑑を押します。
最後に、訂正箇所の欄外(又は遺言書の一番最後に)に、「○字削除、○字加入」と記入し、その下に本人の署名をします。
加筆の場合は、加筆したい箇所に、「∧」「〈」のようなカッコを記入して、加筆したい文字を記入し、文字の近くに押印します(印鑑は遺言書で押印したものと同じ印鑑を使用)。
最後に、加筆箇所の欄外又は遺言書の最後に、「○字加入」と記入し、その下に本人の署名をします。
いずれも最後の部分を忘れやすいので注意が必要です。
なお、他の要件と異なり、訂正の方法が間違っていても遺言書全体が無効になるわけではなく、その訂正や加筆がなかったものとして扱われます。
私どもの事務所では、訂正加筆を行う際の形式の難しさや間違った時のリスクから、可能であれば再度作り直しをしていただくようにアドバイスしております。
⑦遺言を作成した時に遺言能力がない。
遺言を行うには、遺言能力が必要です。遺言能力は、15歳以上であって、遺言の内容およびその遺言によって生じる法的効力を理解できる能力をいいます。
よくあるケースでは、遺言書作成時に病院に通院しており、認知症の診断を受けていたので無効となってしまうのではないかというご相談を受けることがあります。
認知症と言っても症状の程度、日や時間によって症状にばらつきがあり、一律に遺言能力が否定されるわけではありませんので、遺言の内容や効果を理解できる状態で作成された遺言であれば有効となります。
以上のように、自筆証書遺言は、一人で手軽に作成できる反面、形式的な要件が厳しいことや遺言能力で争われるケースも多いため、弁護士に相談しながら作成したり、公正証書遺言にて作成する方がよいでしょう。
弁護士 濱永 健太